詳しくは公取委のページをご覧いただくとして、概要はこんな感じ。
遅くとも平成22年以降より、小売業者に以下の要請を行い、契約にあたって同意をとっていた。
1)各アイテムの販売価格はコールマンが定める下限の価格以上の価格とすること。
→
別紙(PDF)を読むと下限の価格とは「
参考価格の概ね10%引」だそうです。
2)割引販売の際は以下の3つの条件を満たす場合にのみ認めること
a)目的は以下のいずれかであること
・他社の商品を含めた全ての商品を対象として実施する場合
・在庫処分目的
b)割引販売はコールマンジャパンが指定する日以降であること
c)チラシ広告を行わずに実施すること
3)上記に反する値引きをしていた場合は、直接または卸業者を通じ、所定の期日を
期して参考価格まで引き上げるよう要請していた。
参考価格まで引き上げるよう
「要請」とありますが、既存の取引先とは毎年8月に契約更新していた事実から、
卸および小売業者は「要請」を受け入れなければ翌年以降はコールマンより取引を打ち切られると考えるのが自然な流れです。
「要請」と言いつつコールマンの影響力と、「契約にあたり同意をとっていた」ことから
事実上の強制、優越的地位の濫用でしょう。
これらの行為は独占禁止法第2条第9項第4号イ及びロに該当し、同19条により禁止されています。そして、公取委による事実確認および、コールマンは措置命令前の聴聞でも再販価格の拘束を否定しませんでした。つまり、
不正を働いていたということですね。
このような行為は公正かつ自由な競争を阻害し消費者の利益を損なうおそれがあることから、市場メカニズムが正しく機能させるため法律により禁止されています。
本来、
企業は自らの知恵と努力によってより安くて優れた商品を提供して利益を上げるべきです。それによって消費者はニーズに合った商品を選択することができ、利益を享受することで社会の発展が促されます。この点、コールマンは不正な方法で利益を上乗せしていたと認定されても仕方ありません。
さて、これらの不正な行為に対してくだされた行政処分が今回の排除措置命令です。
内容はこんな感じ(多少端折っています)
1)今後、再販価格の拘束を行わない。また、その旨を取締役会にて決議すること。
2)独禁法の遵守を担保するため、
①行動指針を作成
②営業担当者への定期的な研修および法務担当者による
定期的な監査を行うこと。
3)再販価格の拘束を行わない旨を、取引先業者
(卸業者のみならず小売業者へも)
消費者、自社の従業員に周知徹底すること。
1について
拘束は公取委が立入検査した昨年3月17日以降は確認されていないとのこと。
排除命令が出る前に自主的に止めたということは、やはり
「手が後ろに回る」後ろめたい認識があったんでしょうね。
しかし今でも実店舗や各種サイトで価格をウォッチしている限り、
以前と変わってないんじゃあ…
手口が巧妙化しているのかもしれませんね。
公取委には引き続きこのような不正な商行為の監視を続けて欲しいものです。
2について
社内で取り組むため預かり知りませんが、本当に「お詫び申し上げる」と反省しているのならば、ぜひその後の進捗状況を定期的にリリースしてもらいたいと思いますね。
どこぞの都知事じゃないんだから、「辞めておしまい」「謝罪しておしまい」ではなく、「悪かったから今後はこうします。改善状況を適宜お伝えします」ってのが本来の反省、お詫びでしょう。
3について
早速コールマンから
プレスリリースが出ています。
ざっくりと
「立ち入り検査後はやってません。今後も法令遵守を心がけます。スンマセン」といった内容で、「お客様~に~心配をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます」とあります。別に心配してませんが、消費者がより安価に購入する機会を奪われたので迷惑は受けてますね。でも「迷惑」とは言及はないので、
「ルールだしことを荒立てたくないのでからお上の判断に従う。でも(どこでもやってるし)(バレなきゃいい)」位の認識で、悪かったとは思ってないでしょうな。
kyanは法令遵守を軽視するイメージの悪い企業の製品を購入しようとは思いません。社会的使命なんて格好いい理由ではなく、
モラルハザードを起こした企業とのお付き合いはその後のアフターフォローやトラブル発生時に苦労することが目に見えているからです。
最後に自分の身を守れるのは自分しかいません。
今回の一件で、今後も判で押したようにどこでも定価販売が続くようならコールマン社の製品は選択肢から外れるでしょう。
コールマンは「そこそこの値段でそこそこ以上のクオリティ」が結構好きだったんですけどね。同じ価格帯なら鹿マークや楓マークのメーカーより出来は概ねよいというのがkyanのイメージで、大変残念です。
ところで定価販売といえば…他にも後ろめたい企業があるんじゃないですかね…(苦笑)
ほら…モ○ベル、キャンパル○ャ○○、上場企業の雪○などなど。
まぁアウトドア業界の提供商品は生活必需品というわけでもない(=不況下では真っ先に買い控えられる)ですし、パイは他業種と比較して小さいので利益を最大化したい気持ちはわからなくもありません。それに潰れてしまえば多様なギアの選択肢が奪われるという点で消費者にも不利益です。
でもね、時代が変わって昔のような「好きな人たちの同好会的集まりでアバウトな価格決定メカニズム」は通用しないんです。商品名やJANコードで検索すると各店舗の価格が一瞬で比較できる時代なんです。そこで判で押したように同じ金額なら…どう思いますか? そこを認識しているかどうか。
もしやっているならば即刻止めたほうがよいでしょう。不正・違法・脱法行為に対する消費者の視線が近年特に厳しくなっているので、もし明らかになればダメージは想像以上になります。
日本はいわゆる競争政策を採っている以上、日本で商売を続けていきたいのであれば日本のルールに沿って公正・適正な営業活動に勤み、消費者が気持よく買えるようにしてもらいたいところです。
(所要時間:140分)